麻(リネン)について

一概に麻と呼ばれているものは、世界で30種類を超えると言われています。
例えばベルトやカバン資材等に使われる黄麻(ジュート)、麻紐や鼻緒の芯等に使われる大麻(ヘンプ)、漁網や婦人帽子等に使われるマニラ麻(マニラヘンプ)、陸上用ロープ等に使われるサイザル麻(サイザルヘンプ)、ジュートより安価であるため代用される洋麻(ケナフ)等が例として挙げられます。

亜麻(リネン)の花

ここでは、亜麻(リネン)についてもう少し掘り下げて説明致します。
亜麻(リネン)は、約8000年前の古代エジプト時代に流れるナイル川の堤で発見された人類最古の繊維と言われています。ツタンカーメンをはじめとする多数の貴族たちのミイラがリネン布に包まれていたことからも、神聖で気品ある繊維として取り扱われていた事は間違いのない事実です。この繊維が長い道のりを経てヨーロッパに根付き、産業革命を経て大きく開花したのは、1970年代におけるジョルジオ・アルマーニによるリネンのファッション製品への進出でした。この時期がヨーロッパのリネン産業としては最盛期で、現在では紡績も縫製もほとんどが中国で生産されています。

亜麻(リネン)の原料は主としてフランス・ベルギー・オランダで栽培されていますが、リネンとは呼ばず「フラックス」と呼びます。紡績された糸も「フラックスヤーン」と呼ぶのが正しく、フラックスヤーンで作られた織物をリネンと呼びます。
紡績は潤紡システムと言って水を使って紡績をします。その際、投入するフラックスは通常「ハックルドライン(Hackled Line)=一亜を作るための原料」を使用するのですが、昨今はコスト競争のため「落綿ハックルドトウ(Hackled Tow)=二亜用原料」を混ぜ込みコストを落とすようになってきています。
両者の違いは、原料がストレートで長い原料を使う「一亜」の品質が最も優れており、二亜原料の短くて粗い原料を使うとスラブ・ネップが多発する原因となります。
箱屋常吉で取り扱っているリネン製品は、一亜だけで作られた製品です。
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麻の種類

日本では麻は単体で指定するものがなく、その種類すべてを「麻」と呼ぶため種類は何種類にも及びます。そのためここでは比較的多く使用されていて、日頃耳にするものを中心に説明致します。但し、この中で「家庭用品品質表示法」で「麻」と表示することが認められているのは亜麻(リネン)と苧麻(ラミー)の2種類だけです。その他の麻類は「指定外繊維」のため、「麻(ジュート)」「麻(黄麻)」といった表示が必要になります。

名称種別産地特徴及び用途
亜麻
(Linen)
亜麻科一年生ベルギー、フランス、ロシア、ポーランド、チェコ、中国光沢・清潔さに優れた硬直性などによる感触が良い。
シャツ、婦人服、ハンカチ、高級テーブルクロス、セーター、キャンバス地
苧麻
(Ramie)
蕁麻科多年生中国、ブラジル亜麻とほぼ同様。
シャツ、ハンカチ、刺繍地、高級着尺、ニット
大麻
(Hemp)
桑科一年生ロシア、イタリア、中国、インド、ルーマニア、ハンガリー繊維が太くて長い。
麻紐、ロープ、鼻緒の芯、資材雑貨
黄麻
(Jute)
田麻科(しなのき)一年生バングラディッシュ、インド、タイ亜麻、苧麻に比較して張力は弱く、大気中で湿気や日光に長くさらされると変色する。
穀物を入れる麻袋、ヘッシャンクロス、ワイヤーロープの芯
マニラ麻
(Manila Hemp)
芭蕉科多年生フィリピン、インドネシア、エクアドル各単繊維が十分に密接せず隙間があり、中心部が中空をなしているため目方が軽く、水中で浮く船舶用ロープ、漁網、婦人帽子
サイザル麻
(Sisal Hemp)
石蒜科多年生メキシコ、アルジェリア、西インドマニラ麻の代用として使用されるがさらに硬い。陸上用ロープ
洋麻
(Kenaph)
葵科一年生タイ、ベトナム、カンボジアタイジュートとも呼ばれる。ジュートより安価であるが、繊維が粗雑で繊度も太い。
ジュート代用、ジュート混紡用
リネン畑
リネン畑

よくある質問

麻はどうして「しわ」になるの?
繊維自体が硬い為です。けれども、シャキッとした感触と張りが出ます。
麻はどうして「縮む」の?
繊維がストレート(クリンプ・よじれない)で伸び率が少なく、洗っていると縮みやすいのです。但し、今は随分と改良されて、気にならない程度にはなってきています。
麻はどうして「チクチク」するの?
毛羽が「チクチク」の原因です。最近では麻も酵糸加工をする事によって随分と良くなり、ブラウスを着てもさほど気にならない程度になってきています。
麻はどうして涼しいの?
いわゆる“ハリ” “コシ” “シャッキリ感”があり、吸湿、発散に優れています。だから、麻の服を着ていると涼しく感じ、汗ばんでもベトつかないのです。
麻はどうして高いの?
天然繊維で且つ、農作物なので天候に左右されます。寒くても暑くてもダメなのです。それと、原料から糸になるまでの生産工程も他のものと比べて長く、難しいので少し割高になっています。
麻のアピール
  • なんとも優雅な光沢があります。
  • 丈夫です。
  • 発散性に優れているので、乾きが早い。
  • 電気抵抗が小さいので、静電気傷害がほとんどありません。だから、ホコリが吸着しにくいのです。
色について
画面表示の色は、ご利用の環境により実際の色と多少異なる場合がございます。また、天然素材のため、同じ商品でも、生産時期により色の濃淡の違いが出てきます。
サイズについて
サイズは出来上がりサイズになりますが、表記サイズの前後5%の差は許容範囲としてご理解ください。天然素材のため、生産時期の違いによりウォッシュド加工時の収縮率に個体差がございます。
麻キッチンクロス

麻製品の取り扱い

具体手順
  1. 洗濯する前に、まず製品についている洗濯絵表示を確認する。
  2. 洗濯絵表示が手洗いの場合は、弱アルカリ性の洗剤で軽く「もみ」「押し」洗いをする。
  3. 洗濯機を使う場合の洗濯時間は、4~7分でよい。
  4. 洗濯水温は30~40度が適当である。
  5. 洗濯機では、製品をネットに入れ、後のすすぎを十分に行い、洗剤を完全に落とす。
  6. 生成りや淡色の製品を蛍光増白剤や漂白剤入りの洗剤で洗うと、白っぽくなることがあるので、必ずそれらの入っていない洗剤を使う。
  7. 麻製品のうち、色合いの濃いものは、水に濡れたり、強くこすると、色落ちや他の衣服などへ色移りが起きることがあるので、白いものと一緒に洗濯することを避ける。
  8. 麻は染めにくい繊維であり、濃色のものほど強くこすったりすると白化現象を生じ、変色して見える場合があるので扱いに注意する。
  9. 遠心脱水は1~2分程度に留める。時間をかけるとシワがとれにくくなる傾向にある。
  10. 乾燥はなるべく風通しのよい日陰で行う。
シミが付着した場合
  • 醤油・ソースなどは、良質の石けんを溶かした液の中に20~30分浸し、汚れた部分を軽く手もみ洗いをする。
  • バター・油は、温かく濃いめの石けん水でもみ洗いする。
  • コーヒー・紅茶は、かすをよく取り去り、熱湯を注ぐ。
  • クリーム・ミルクは、冷たい水につけてもみ洗いをする。
  • トマトジュース・ケチャップは、水を含ませたスポンジで汚れを拭い、熱い石けん水で洗う。
  • インク・サビは、シュウ酸カリ液(インク消し)で汚れを取る。
  • フルーツ・ワインは、塩とレモン汁でもみ、熱湯を注ぐ。
麻キッチンクロス
アイロンがけ
麻製品は、乾いた状態でアイロンをかけてもシワが伸びにくいため、スプレーで十分湿り気を与え、当て布をしてアイロンをかけるか、スチーム・アイロンを使う。
また、アイロンをかけすぎると布地が光ることがあるので、まず裏側からシワを伸ばし、次に表にアイロンをかけてツヤを出すようにする。麻混の場合は、組成によりアイロン温度が異なるので、必ず洗濯絵表示を見て温度を調節する。
麻巾着袋